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「サイレント・ランニング」
製作●マイケル・グラスコフ 監督●ダグラス・トランブル
脚本●デリック・ウォッシュバーン マイク・チミノ(マイケル・チミノ) スティーブン・ボッコ
撮影●チャールズ・F・ホイーラー 特殊効果●ダグラス・トランブル ジョン・ダイクストラ他
出演●ブルース・ダーン
1972年/ユニヴァーサル映画/テクニカラースタンダード90分 配給/ケイブルホーグ
物 語
20世紀末、地球上の植物は全滅していた。わずかに残された木々や草花は、地球から遠く離れた宇宙空間に停泊する3隻の巨大な宇宙輸送船のドームの中で育てられていた。ヴァレー・フォージ号もその中の一隻だった。乗組員たちは一刻も早く帰還命令が出されることを望んでいた。2001年を迎えた日、地球政府から全員に帰還命令が発せられた。狂喜する乗組員たちをよそに、一人植物学者のローウェル(ブルース・ダーン)だけは暗い表情をしていた。彼が心から愛し育てた木や草花を収容したドームを爆破せよという命令が出ていたからである。ついに地球に帰る日がきた。次々と宇宙船からドームが切り離され、宇宙空間でまばゆい光となって爆発してゆく。たまりかねたローウェルはドームを爆破する準備をしていた3人の同僚を殺してしまう。
やがてヴァレー・フォージは土星の輪に突入し、その時船外作業をしていた3台のドローンと呼ばれる小型ロボットの一台が逃げ遅れて吹き飛ばされてしまう。ローウェルは残った2台のロボット
にヒューイとデューイという名前を与え、吹き飛ばされたロボットにはルーウィと名付けた。あるとき、ローウェルはドームの植物が枯れかかっていることに気付いた。暗黒空間に入り込んだために、植物に必要な光が不足したのが原因だと知り、ライトを点灯して光を供給した。やがて、宇宙船がローウェルを救助にやってきた。彼はもうどこにも逃げられないことを悟り、事故にあって動けなくなったヒューイと共にヴァレー・フォージを爆破する決心をした・・・。
解 説
「サイレント・ランニング」は、公開当時よりも現在の方が評価の高い作品である。時間がたつにつれて、その真価が認められるようになり、70年代のSF映画を語る際に欠かせぬ作品とまで言われるようになった。
監督は、「2001年宇宙の旅」「ブレードランナー」のSFXのエキスパートとして余りにも有名なダグラス・トランブルで、この「サイレント・ランニング」が第一作に当たる。題名は軍事用語で潜水艦が敵の探知を避けるためにエンジン、電気、ソナー等の運行をやめて音をたてないようにすることを指している。
2001年、地球では植物が全滅し、わずかに残った植物が宇宙船ヴァレー・フォージのドームで育てられていた。そこへ地球政府からドーム爆破の命令が下り、植物学者フリーマン・ローウェルは植物を愛するあまりに仲間を殺害し、宇宙空間へ逃走を試みる・・・。
SFXはトランブルの他にジョン・ダイクストラ、リチャード・ユーリックが指揮をとった。宇宙船の長いテイル部分は70年の大阪万博のエキスポ・タワーがヒントになっており、トランブルはこのタワーをあらゆる角度から写真に撮り、その写真を渡されたダイクストラはそれを基にしてミニチュア・モデルを製作した。日本製プラモ・キットが800個分、切断されサンド・ペーパーをかけられて糊づけされたのである。
ローウェルの手助けをする3台のロボットには、ヒューイ、デューイ、ルーウィ、というドナルド・ダックの甥の子の名前がつけられているが、言葉をしゃべることもできぬのに全身で演技をし観客の注意をひかずにはおかない。SF映画で、かくも愛らしく哀しいロボットは類をみないといっても過言ではないだろう。撮影はチャールズ・F・ホイーラー、主題歌をジョーン・バエズが歌っている。
撮影期間は37日間、その後、SFX部分に6ヶ月かかった。さながら修道僧を思わせる主人公のローウェルには性格俳優ブルース・ダーンが扮し、クリフ・ポッツ、ロン・リフキン等が助演している。
「サイレント・ランニング」はアメリカでは、72年3月に公開されたが、興行成績は芳しくなかった。しかし、この作品はその後、評価が高まりSFとしては珍しくカルト・ムーヴィーとなった。今、幻のSFが10年ぶりにそのベールをぬぐ・・・。
ダグラス・トランブル 作品リスト
[監督]
「月へ、そしてそれを越えて」(未)64年短篇
「サイレント・ランニング」72年
「ブレインストーム」83年
[SFX担当]
「2001年宇宙の旅」68年
「キャンディ」68年
「アンドロメダ・・・」71年
「未知との遭遇」77年
「スター・トレック」79年
「ブレードランナー」82年
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