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「スローターハウス5」


解説&ストーリー
 アメリカでベストセラーとなった力一ト・ボネガートの小説の映画化。一種独特の作風と複雑な構成のこの小説は映画化は難しいとされていたが、鬼才ジョージ・ロイ・ヒル監督(「明日に向って撃て!」、「スティング」)が、やはり「明日に向って撃て!」の製作者ポール・モナシュと組んで美事に映画化した。
 主人公のビリー・ピルグリム(マイケル・サックス)は、過去、現在、未来を、なんの脈絡もなく行き来する。それは彼の意志とは関係ない。彼が次にどの時代へ行くかは、彼の理解を超えた力に支配されているのだ。いわば超能力の人間である。彼は第二次世界大戦に参加し生死の境をさ迷いドイツ軍の捕虜となり、ドレスデンの "第5屠殺場" と呼ばれる捕虜収容所でナチの虐待をうけ、しかも恐ろしい焼夷弾爆撃を体験した。人間が虫ケラのように殺されて行った。その戦争中に受けた強烈な衝撃が彼の脳裡に焼きついて、忘れ去ることが出来ない。彼の超能力はこの戦争の爪跡だといえる。明るい平和や自由の中で暮していても、彼はいつか知らぬ間に暗黒の過去の中に自分を置いてしまう。こんな男を演ずるマイケル・サックスは、いつも驚いたような、焦点の定まらないような眼と、クールな容貌で、過去、現在、未来を行き来するビリー・ピルグリムという難しい役を見事に演じている。ハーバード大学在学中に俳優を志し、卒業後、役探しをしているところを、ロイ・ヒル監督に見出されて、ニの大役を獲得した。ロイ・ヒル監督はまた、このビリー・ピルグリムの未来社会の相手役になるモンタナにもずぶの素人バレリ一・ペリンを起用して幻想性を高め、傍役にはブロードウェイの芸達者、ロン・リーブマン、シャロン・ガンズなどを配している。ヴェニス映画祭の特別審査員賞を受賞した。
 ストーリーは戦後のアメリカからはじまる。眼科医として成功した中産階級のビリー・ピルグリムである。ビリーは自分の意志にかかわりなく過去、現在、未来を往復する悩みをタイプに打ちつづけていた。文章に残したところでどうにもならないと知っているのだが──。文章によれば──。ビリ一は、眼科専攻の医学生時代に召集を受け軍隊に入隊、ヨーロッパ戦線に連れていかれた。ベルギーでの激戦のあと、気がついた時は一面雪景色の中で、2人のGIに囲まれていた。GIはラザロ(ロン・リーブマン)とウォーリー(ケビン・コンウェイ)だった。2人はビリーをドイツ兵と間違え、認識票を失っているビリーの言葉を信じない。争っている所へ本もののドイツ兵が現われて3人は捕虜となった。収容所に運ばれる間に、ウォーリーの足が腐りそれがもとで彼は死んだ。ラザロはビリーが彼の足を何度も踏んだから腐ったのだと、気狂いのようにビリーを呪い、親友のための復讐をするとちかった。
 同じアメリカ兵の捕虜仲間でもダービー(ユーゲン・ロッシエ)は40代の代表的なアメリカ人で、ビリ一に優しかった。ヒトラーから世界を守るため志願して戦場に来たという。幼な馴染と結婚したといい、妻の写真をビリーに見せた。ビリーがドイツ兵から着せられた変な格好の上衣にダイヤが入っていたのを見つけたのも彼だった。ビリーはそのダイヤをアメリカヘ持ちかえって妻に贈った。
 ドレスデンの第5屠殺場とよばれる収容所へ送られた時も、捕虜代表に選ばれたダービーは、ラザロの敵意からビリーを守ってくれた。 ドレスデンの大爆撃で焦土と化した町の整理に捕虜がかりだされた。ダービーはそこで拾った妻との思い出の人形と同じ小さな人形をポケットに入れようとしたところをドイツ兵に発見されてその場で銃殺された。
 帰還したビリーは、金持娘と結婚し、1人の娘と1人の息子を得て、一見幸福そうだった。だが彼は本当に幸福だっただろうか。
 1人息子は不良少年グル一プの仲間入りして、警察に保護される。結婚した娘はどうやらまともに幸福だった。ある時、妻バレンシア(シャロン・ガンズ)の父親と、飛行機をチャーターして会議に出かけたが、離陸寸前にビリーはその飛行機が事故で墜落すると感じた。案の定飛行機は落ち、助かったのはビリー1人だった。これを聞いて病院にかけつけようとしたバレンシアは、気狂いのような運転をしたため、事故を起して死んだ。
 病院から家に帰ったビリーは、娘夫婦のすすめも聞かず、1人で家にこもった。ベトナム戦線から戻った息子は、やっと一人前の男になって頼母しそうになったが、ビリーは心から喜んでいるふうでもなかった。息子が帰ったあと、1人ベッドに横たわるビリーに、以前にも、2、3度現われては去っていったトラルファマドァ星雲からつかわされた不思議な物体が夜空に光りを放って近づいて来た。そして、あっという間にビリーは星へ連れて来られた。星の上の住居はドームのようだ。そこヘモンタナ(バレリー・ペリン)が奇声をあげてやって来た。トラルファマドァでは2人の望みはなんでもかなえられ、2人は愛しあった。
 また、現実に戻ったビリーは、フィラデルフィアで講演をしている最中、遂に撃たれて死んだ。犯人はラザロだった。しかしビリーの死は地球上だけのことで、彼は再びトラルファマドァで、妊娠した美しいモンタナと楽しく暮すことが出来る。
 以上のストーリーで、ビリーは過去、現在、未来をひっきりなしに往復するのである。

■鬼才ジョージ・ロイ・ヒル監督が放つ文芸大作!
SLAUGHTERHOUSE-FIVE

スローターハウス5 ファイブ
■カンヌ映画祭受賞作品
■カラー作品■ユニヴァーサル映画/CIC配給


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