星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶−
結の承章
スーハー スーハー
実際の宇宙空間では、映画のようにピキュンとかギュワーンとかいう音はしない。
自分の息と、宇宙服の微かな動作音だけだ。
スーハー
急接近する2体のビルドアームを捕らえながら自分の呼吸を意識する。
意識しないレベルで呼吸のコントロールができないと闘うどころじゃない。
スーハー スッ
突っ込んできたバターナイフの初撃を避け後続のビルドアームに組み付く。
背中でビルドアーム同士の激突を感じながら、さっきと同じように頭部を破壊した。
振り返ると、胸部のコクピットを全開ににしたビルドアームのパイロットが何かを指示している。
最初の奴が隊長ってとこか。
指示を理解したのか無傷の1体がこっちに向かってバターナイフの投擲態勢に入った。
こっちに推進装置がないのがバレたか。。。
飛翔するバターナイフを頭部が破損したビルドアームで受ける。
(ちっ)
ガツンと食い込んだ長槍は慣性の法則を実演しつつビルドアームに新たな運動ベクトルを与えた。
だんっ
と、俺はビルドアームを踏み台にして残る2体のほうへ向かう。
更に新たな運動ベクトルで加速を得たビルドアームが虚空へ消えた。
わりぃ。。。死にゃしねぇだろう。
残った2体が、ぱっとバラける。
いや、コクピットを全開にしていた隊長さんが、まだモタモタしてる。
チャンス。
ガツンと組み付いて、閉じかけたコクピットをこじ開けると、中で隊長さんがバタバタしていた。
何してやがる。。。
と、不意にビルドアームが動いた。
シャトルから遠ざかろうとしている隊長さんのビルドアームから後方を確認すると、残りの1体がシャトルへ向かう姿が見えた。
(テメェこの野郎)
閉じかけたコクピットをギシャンと踏みつけると、シャトルの方へとんぼ返りする。
隊長さんがどうなったかは、知ったこっちゃねぇ。
シャトルが。。。ヤバイ
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