星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶−
転の転章
相棒はそこにいた。
巨大な体を小さくまるめて、こそにいた。
(よう、窮屈だったろう)
そう声をかけて、俺は相棒に乗り込む。
ジェシカをエアロックまで送りたい欲求をぐっとこらえながら、相棒を外へと移動させる。
ハルが謎のビルドアームを目にしてから、短くはない時間が経過している。
これだけあれば、接触していてもいい時間だ。
ってことは何らかの交渉が進んでいるのか。
うかつに襲い掛かれば、仲間の命まで奪いかねない状況に手をこまねいているのか。。。
現状の把握ができないまま、ゆっくりとシャトルの底部を這うように(というか這って)前方へ進んで行く。
推進装置のない『歩ヒョウ』である相棒は、宇宙空間にほおり出されると、救助を待つだけの棺桶に成り下がる。
シャトル前方で確認される恐れがあるため、俺は一旦、相棒から降り、シャトルの窓からコクピットをそっと除き込んだ。
幸い物騒な奴らはいない、2・3・・・4人の人間がいた。
そのうち一人はグランツだ。
こここっ
窓を叩くと、この振動が内部に届いているのかどうかは不明だが、一番近くのシャトルのパイロットらしき人間が気付いた。
驚愕の表情。
そりゃそうだ。
「うわっ」とか「うぉっ」とか言ったに違いない。
4対の眼がこっちを見た。
(よう)
と手をグランツに向かって手を上げる。
(よう)
と向こうも返してきた。
話が早くて助かる。
よく見ると、グランツはインカムに向かって何か指示を出している。
やっぱり何か手こずっていやがる。。。
グランツが上を指差し、続いて両方の指先を何度か交差させた。
チャンバラか。。。いいねぇ。
グランツは後ろの客席のほうへすっ飛んで行く。
俺は相棒へ飛び乗った。
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