星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶−
転の承章
宇宙遊泳なんて。。。えらく久しぶりだ
などと、感慨ふけっている場合じゃない。
シャトルの船外作業用器具にカラビナを取り付けてから、エアロック内部のカラビナを外す。
隣をみるとジェシカも手なれた動きで同じことをしていた。
「で、何を致しましょうか?」
あ。。。なんてザマだ、ジェシカに何も伝えちゃいなかった。
「荷物。預けてある荷物を出したいんだ」
そう聞くと、かしこまりましたと、ジェシカは動き出した。
「目的地はステーションDS11・・・」
言うと、
「お荷物の控えの番号を覚えていらっしゃいますか?」
船体下部に移動しつつジェシカ。
「L−Eの800番台だったと思う」
俺はポケットに入っているハズの番号を思い出して言った。
「了解しました。ありがとうございます。」
ありがとうございます。はこっちの台詞だ。
「L−EのLは左のL、EはE番カーゴ、800番台の数字は連番になってますので。。。」
ここですね、とたどり着いた場所は、船体後部に程近い。
「開けますので、エアーの噴出口から離れていてくださいね」
外装に仕込まれている小さなコントロールパネルを操作すると、DANGERと書かれている穴からカーゴ内のエアーが排出される。
ゴゴンと船体に触れた手から振動が伝わる。
ゆっくりとカーゴの扉が開き始めていた。
暗いカーゴ内に作業用の灯りが点々と灯ってゆく。
ちかっ ちかちかっ
っと、目の前のジェシカが不意にバランスを崩して作業用の手すりにすがりついた。
エアーに当てられたわけじゃない。
見ちまったんだ。
俺の相棒を。。。
「次は何をいたしましょうか?」
スピーカーからジェシカの声。
たいした女だ。
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