星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶−

星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶− 第7巻



起の承章

モールス信号ってのがある。
これは1837年にアメリカのサムエル・モールスによって考え出された通信方法で基本は26世紀になろうが変わりはない。
でもって、前の席の男が使っている信号体系は軍用正式信号だ。
どうしてそんなもん知ってるってーのは、蛇の道は蛇ってヤツ。
細かいことは気にしない。
ま、特殊な暗号形式だった場合、解読は難しいんだが、前の席の男が使っているのは通常の信号だ。
俺は外の暗闇を睨みながら、窓枠を叩き前の男に問いかけた。
カカツカツカツ
通信文は(問う・終了)、要するに何が起きてるかってのを聞いたのだ。
少し間をおいて、男も窓枠を叩いて返答してきた。
しかも、ハンドライトの信号はそのままだ。器用な奴だな。
(人・問う・終了)
お前は誰だってことだな、ま、当然の返答ではある。
(操る・人・終了)
一応『ヒョウ師』であると返したが、操縦士のことを指すことが一般的だ。
ま、嘘はついちゃいない。
(問う・終了)
続いて同じ問いを繰り返すと、少し間があって返事があった。
(危険・高・人・運ぶ・計画・終了)
どこの誰だか分からんが、お偉いさんのご旅行の計画が漏れて相当ヤバイことになってるみたいだ。
(了解・終了)
(動く・問う・終了)
あまり怪しまれないように、とりあえず、なにか手伝うことはないか聞いてみる。
(?@X?X・終了・終了)
何か伝えようとして、会話を打ち切った男はハンドライトを握りなおした。
どうやら、SOSの信号は自動送信だったらしい。
ちっ、感心して損した。
どれくらい離れているだろう、星々の一つと見間違えそうな小さな光が何かの意思を伝えてきた。
(SOS・受信・SOS・受信・・・・・・・)



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