星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶−

星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶− 第7巻



起の起章

「アニキ、やばいっすよぉ」
騒がしい。。。
『より快適になった』って宣伝文句の一番安いグレードのシートでようやく眠れそうだって時に。。。
俺はこの喧騒を無視することに決めた。
「アニキ、やばいっすよぉ」
右隣でボソボソやってるのは相棒・・・いや、下っ端のハルって小僧だ。
周りの客を気にしてボソボソやるくらいなら、すやすや眠っている(様にみえるはずの)俺に気を使え。
「ハァ・ニィ・キィィィ」
小声でめいっぱいってなると、こういう風に聞こえる。
んで、こいつの言う『ヤバイ』が本当に『ヤバイ』ほうの『ヤバイ』であることが俺を生暖かい眠りの海から引き上げた。
「んぁ?」
と俺は言ったに違いない。
意味は
「なんだこの野郎、人がせっかく気持ちよく寝ようかってぇ時に、なんでもなけりゃぶちのめすぞこの野郎」
だ。
「アニキぃ」
言葉の意味を正確に汲み取ったらしいハルは、泣きそうな顔を更に歪めた。
「んで?」
と俺は言ったに違いない。
意味は
「どうした、すっとこどっこい?」
だ。
「なんだか様子がおかしいんすよ・・・これってハイジャックってヤツじゃないんすかね?」
ハイジャックって・・・
確かにどこがどうとは言えない妙な雰囲気だ。
・・・機内サービスも途中で中断しちゃったし・・・
考えてる間にもハルはボソボソやっている。
(ん?)
さりげなく周りを見回すと一つ前の座席の男が窓の外に向かってハンドライトをチカチカやっていた。
外の船が、こちらに注意を向けていないと解らない程度の信号・・・
内容は『SOS』だった。



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