星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶−

星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶− 第6巻



追の承章

最悪だ。
窓から下を覗き込むと2台のトレーラーからビルドアームが起動している最中だった。
今から降りていったとしても、現時点で起動つつあるビルドアームは行動を起こしているだろうし・・・

「茜さん、道場でハルが連絡を待ってます」
「奴に連絡して八雲さんを起こすように・・・そして、すぐに逃げるように伝えてください」

放心状態の茜さんの両肩を揺すりながら、俺は言った。
強く肯き電話の方へ向かう茜さんが倒れた馬鹿に蹴りを一発食らわせたのを見て、俺もまた苦笑しつつ立ちあがった。
窓を覗くと既に片方のビルドアームが立ち上がり、被さっていたシートをトレーラーの荷台に下ろしていた。

「いっちょ、やってみるか」

窓のガラス面を軽く叩くと軟質強化ガラス(透明な樹脂性のガラス。かなり丈夫)の低い音がした。

(だよな)

窓はロックを外せば右端を支点に窓の左側が外へ向かって30センチほど開く仕組みになっている。
開閉部の仕組みをチェックした後、ロックを外したまま窓を閉めた。
後ろでは茜さんがハルに連絡している声が聞こえる。
俺は窓から一歩下がって、大きく深呼吸をした。

「しゃぁ」

気合と共に俺は渾身の前蹴りを放っていた。
窓の左端へ・・・

ががぎっ

金属部品が砕ける音と共に窓は大きく開いていた。
吹き込む微風が心地良い。

「ハルさんに連絡して、父を起こしに行ってもらいました」

大きく開け放たれた窓枠に手を添えた俺を振り返りながら茜さんが言う。
だが・・・

「残念ですが、ハルは間に合わないでしょう」

俺の視線の先には起動したビルドアームが二台、八雲道場の前に立っているのが見えた。

「でも、まだ中に人がいるのに・・・そんな・・・」
「私、行ってきます」

後ろからやってきた茜さんも同じ光景を見ながら言った。

「待ちなさい」

踵を返す茜さんを呼び止めた俺。

「じゃぁ、ここでこうして見ていろっていうの?」

厳しい口調だった。
対する俺の答えは・・・

「俺が助けます」

俺は、窓から飛んだ。
ある『モノ』を思い描きながら。



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