星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶−

星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶− 第6巻



結の承章

俺とハルは道場にいた。
須田くんとアンドリューくんはこの宙域の武道大会に出場するため有望な若手を何人か引きつれて外出中だ。

「さっき、お嬢さんの悲鳴が聞こえたんです」

ハルが言うには駆けつけた時には既に、茜さんの姿はなかったらしい。

「聞き違いなんじゃねぇのか」

ハルの方を向いた俺は、疑いを隠さず言った。
なんたって寝てるところを無理矢理起こされたようなもんだ、語気が荒くなるのも当然だ。
急に不安になってきたのか、ハルが腕を組んで唸る。

「思い出すか、茜さんが見つかったら、もう一回起こしに来いや、俺はもうひと寝入りしてくらぁ」

そう言って、道場を出ようとした時だった。

リリリン リリリン

どこで見つけてきたのか不明だが八雲道場の古いレプリカの電話が鳴った。

「お嬢さんかな・・・」

ハルが電話を取りに走る。
とりあえず、電話の相手を確かめようとしばらく待っていると、
ハルが電話の子機を持って戻ってきた。

「兄貴にです」

電話を差し出すハルに誰からだと尋ねると、さぁ・・・と答えやがったから一発殴ってから子機を受け取った。

「はい、榊ですが・・・」

電話に出た俺の横でハルが痛ぇなもうとふくれるのを横目に、

「なんだと、てめぇ」

俺は、怒鳴った。
びくんと縮みあがるハルが見えたが、奴に言った訳じゃねぇ。
電話の向こうの野郎が、こう言ったからだ。

「女は預かった」

と。



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