星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶−

星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶− 第6巻



起の結章

カジノでの一件の翌日。
いつものようにバーで一杯やっていると、
・・・もちろん勤務時間外だ・・・
3つほど左向こうの席に彼女が座った。
昨日、大男をぶん投げたあの彼女だ。
声を掛けようかと立ちあがりかけたその時、彼女がこっちを向いた。
少し驚いたような顔であったが、その後には笑顔と小さな会釈が続いた。
無論、俺は席を移動した。

「何か武道をしていらっしゃるんですか?」

昨日の一件の事を話し終わり、会話が一段落した時に彼女が言った言葉だ。
俺は彼女の『武道』という言葉で納得した。
今時『武道』なんて言葉を日常会話のなかで使う人間はあまりいない。
やっぱり彼女も俺達の仲間だったんだ。
ここは、俺から先に話そう。
場合によって話せない事も出てくるだろうからな・・・

「武道というほどではありませんが」

俺は今までの旅の経緯をかいつまんで話した。

「廻国(じゅんこく)されているのですね」

『廻国』ってのは修行の旅ってとこだろうか、
各地をまわりながら、自分を鍛えてゆく旅と考えてくれればいい。

「コロニー『P3』を訪れることがあったら、ここへお立ちよりください。何かお役に立てるかもしれません」

コロニー『P3』ってのは辺境の更に辺境。
未だ名前もまともに付けられていない『P』番台のコロニー群のうちの一基だ。
彼女の差し出した紙には、そのコロニー『P3』の番地と『八雲道場』の名があった。

「そういえば御挨拶がまだでしたね」

こっちへ向き直った彼女は右手を差し出しながら、

「八雲 茜(やくも あかね)です」

そう言った。



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