星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶−
起の起章
頭が痛い。
原因は昨晩の酒のせいじゃない。
いや、久しぶりだったせいもあり少しばかり飲みすぎたかもしれないが・・・
それにしても、この馬鹿声なんとかしてくれ。
そうだ、頭痛の原因はこの馬鹿声に違いない。
『起きろ』だの『大変だ』だの言われても俺には、何のことだかさっぱりだ。
それより、もう少し・・・眠らせろ・・・
・・・何?
いま、『お嬢さん』て言わなかったか。
・・・ヤバい・・・
こいつはヤバいかも知れない。
「馬鹿野郎。なんで早くお嬢さんの事を言わねぇんだ」
がばっ、と起き上がった俺は騒音の主の胸ぐらを掴んで怒鳴った。
とっさの事に言葉を無くした騒音の主は口を『○』くして固まった。
俺の予想が正しければ、こいつは確かに大変だ。
悪い事に俺の予想はよく当たる。
嫌な予想となればなおさらだ。
となれば、こんなところでぐずぐずしている場合じゃない。
「行くぞ、ハル」
俺は騒音の主の頭を一つ叩いた。
「兄貴ぃ。行くって、どこへですか」
いつも、泣きそうな声をだすんじゃねぇって言ってるのにわかんねぇ奴だ。
「そりゃお前、『大変』な現場に決まってるだろう」
俺がもう一発、ハルの頭を叩いたのは言うまでもない。
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