星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶−

星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶− 第5巻



結の結章

おデブのビルドアーム。
ことわっておくがビルドアームが太ってるわけじゃねぇ。
その左ストレート・・・ジャブぎみだな・・・の後の右ストレート。
その時、俺は体を右へ開きつつ上体を少し後ろへ倒した。
同時に重心は右脚に移っている。
当然のように左脚は浮かびあがる。
この場合の左脚は蹴りに行った訳ではない。
・・・無論蹴りにゆくって手もあるが・・・
そうだな乗馬、馬に乗る時みたいなもんだ。
昔の映画、見たことあるだろう。
あんな感じだ。
何かに跨(またが)るイメージ。
今はビルド・アームの右腕だ。
左脚が上がってゆくのと同時に右脇に右腕を抱え込む。
完全に抱え込む直前に全体重を支えていた右脚で地面を蹴ると、ビルド・アームの右腿を踏みつける。
その時には伸びきった右腕・・・パンチは伸ばしきっちゃいかんよ・・・はしっかり俺が固定している。
ちょうど立ったままのビルド・アームの右腕に抱きついたかっこうだな。
酷くバランスの悪い格好だ。
右のパンチからここまで2〜3秒。
これが俺のスピードだ。
デブは俺を振り払おうと・・・思ったのかどかは解らねぇが・・・もがく。
倒れずに頑張っているのは偉いもんだ。
が・・・左脚だ。
覚えているだろうか。
ビルド・アームの右腕をまたいだ左脚はビルド・アームの頭を超えて胸の前まできている。
その時、落下するときの浮遊感が・・・
野郎、俺を地面に叩きつけるつもりらしい。
実際には上下に揺すっただけだが。
対して俺は奴の右腿に乗せた右脚をふんばって、その動きを封じた。
奴の肩と腕の間接が悲鳴をあげる。
ここまでだな。
そう思った俺は奴の胸の前にあった左脚を跳ね上げた。
次の瞬間。
ぎしゃっ
と俺の『歩ヒョウ』=『レン』の左踵(かかと)が奴のビルド・アームの顔面を捉えた。
左踵の下で破壊されたカメラや計測機器がばちばちとショートしている。
その一撃でついにバランスを崩したビルド・アームがゆっくりと後ろに倒れてゆく。
顔面にめり込んだ左脚、右腿の上の右脚、それから右脇に抱えた右腕で崩れ落ちるビルド・アームをコントロールする。
ビルド・アームが完全に地に伏した後も俺は、俺の『歩ヒョウ』=『レン』はビルド・アームの上に立っていた。




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