星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶−

星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶− 第5巻



結の転章

俺は残った一台と向かいあった。
勝負は見えている。
ここはとっとと決着を付けないと、いくら警備員がいないからっていっても通報されちゃ同じことだ。
「なかなかやるもんだな」
いやに自信たっぷりな口調だ。
腹の肉もたっぷりな奴はいうことが違うね。
「こいつは他の奴とはちょっと違うぜ」
両手を顔の高さまで上げてガードしている。
やや前傾した姿勢はボクシングスタイルに近いだろうか。
こいつには戦闘用ロジックがインストールしてあるんだろう。
ってことは、マシンの性能もそれなりだと考えるのが妥当だろう。
論理ロジックに機械がおいつかないって間抜けなことも考えられるけどな。
俺も同じように両腕を上げてガードをする。
ただ奴ほど上体は前傾させてはいない。
この構えをとったってことは、この勝負を受けたってことだ。
「嬉しいねぇ」
そういうデブのビルド・アームが左右のパンチを放った。
威嚇のつもりだろう。
『歩ヒョウ』に喧嘩売るだけあってパンチのスピードはなかなかのもんだ。
こうでなくっちゃな。
「どうだ、このパンチ。恐くなったか」
たっぷりと間をおいてデブが言った。
面白くてたまらないようだ。
俺は変わらず動かない。
いや動かないってのはウソだ。
少し腰を落した姿勢のまま、膝でタイミングを計っている。
まあ、そんなこと奴が気付いているとは思えねぇが。
「そんじゃいくぞ。『からくり野郎』」
デブのビルド・アームは猛然とダッシュした。



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