星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶−

星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶− 第5巻



結の承章

ビルド・アームってのはもともと、医療用の義手や義足から発達したものと、大型工作機械から発達したものがある。
目前の三台は後者の方だ。
であるから基本的にパワー重視でありスピードは二の次だ。
したがって、この俺には止まって見えるってほどの動きしかできない訳だ。
向かって左、少し遅れて右の奴が襲いかかってくる。
とはいっても寝起きのカタツムリほどのスピードだ。
向かって左の奴が右手を伸ばして掴みかかってくるのを左側に大きく一歩踏み出してかわすと、右の手刀をビルド・アームの首筋に叩き込んだ。
ばりっという表面装甲が砕ける音の後、コードや細かい部品を粉砕しながら構造体の鋼が歪む。
バランスを崩したビルド・アームがズダンと倒れたところを踏んずけて、そのままもう一台のビルド・アームへ左の前蹴りを放った。
位置関係からして外したかと思ったが、こっちへ向き直ったもう一台のアゴの部分をかすめた。
軽い当りだったが、センサー類をたっぷり装着したまま頭部装甲がふっとんだ。
今頃コックピットじゃアラームの大合唱だろう。
俺に踏んづけられているとも知らないまま暗闇で動けない奴よりましかも知れんが。
一瞬にして二台のビルドアームを撃破した俺は、残る一台・・・きっとあのオデブちゃんだ・・・に向き直った。



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