星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶−
承の起章
俺は立っていた。
しかも仁王立ちだ。
周りには整然と無造作に建設資材が置いてあり、
目の前は偶然の産物か、単なる通路なのかちょっとした広さが確保されてあった。
俺のトレーラーハウス・・・大きめのバンだが・・・は後ろの資材の山の間に止めてある。
コロニーゲート近くの資材置場なんざ、ほとんど人の出入りはない。
しかし、轟音を撒き散らし資材の山の間から現れた大型車両は見えるだけで3台あった。
建設資材置場にはふさわしい車だが奴等が探しものは建設資材じゃなさそうだ。
「若いの。この資材おきばからコロニーゲート横への抜け道を使おうとしたんだろうが、そいつは手前の道を左へゆかにゃあならねえ」
大型車両からのマイクの声は何か勘違いしているみたいだったが、ほおっておいた。
「残念だが、ここでゆきどまりだ」
有意義な情報に礼のひとつもせにゃあと思ったが、もう少し待つことにした。
「ああ、それから入口の警備員には早めにあがってもらったよ。たまには家族サービスもしなきゃな」
ぐへへと品性を窺わせる笑い声が続いた後、わらわらと車から手に得物を持った人間が出てきた。
「こいつらが世話になったらしいな」
マイクの声の主であろうでっぷり太った男に首ねっこを捕まれた男が二人。
なんとなく見覚えがある。
いまひとつ確信がもてないのは俺の記憶があやふやなんじゃなく、男達の顔が変形しているせいだ。
「あんたのおかげで酷いありさまだ」
どうやら治療費をがっぽりせしめるつもりらしい。
その治療費のうち実際俺の担当したぶんは10%以内だろう。
「どうしたもんかな」
自分の言いたいことはしゃべり終えたのか、ずるそうな目でこっちをみてやがる。
ざっと見たところ、すでにぼろぼろの二人を入れて12〜13人ってとこだろう。
一人じゃ、ちっとばかしキツい人数だな。
「治療費は二人で・・・」
ニヤニヤ笑いながら大人一人分の平均年収より多い金額をぬかしやがった。
「はらえるかな?なんならいい金融屋を紹介するぜ」
男の決まり文句なのか周りにいた奴等がどっと沸いた。
たっぷりと腹を揺らしたあと、舐めるような目つきで男が
「どうする若造」
とぬかしやがった。
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