星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶−

星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶− 第3巻



転の転章

「バブさん、いい仕事するねぇ」
脂ぎったオッサンがそう言いながら近づいてくる。
当人は自然体なんだろうが、かなり不快な雰囲気の持ち主だった。
「そっすか?」
明らかに嫌がっている。
嫌がっているのが解からないのか、嫌がっているのを楽しんでいるのかオッサンはバブさんの肩をバンバン叩きながら「いいよいいよ」とご機嫌だ。
「そこで、だ・・・」
一旦言葉を切ったオッサンは濁った目で嘗め回すようにバブさんを見た後、
「俺の専属にしてやることにしたんだが、これからこれるかな?」
は?
きっとバブさんも同じ事を思ったんだろう、は?って顔をしている。
「準備に時間がいるってんなら2、3日待ってやってもいいぞ」
は?
どうやらオッサンの中にはバブさんの拒否という選択肢は存在いないらしい。
2、3日待ってやってもいいぞって言った時の表情は、俺はなんてやさしーんだ!って自己満足に満ち溢れていた。
「あの、ありがたいですが、お断りします」
ま、そうだろうな。
「。。。ん?」
オッサンが聞き返す。
取り巻きに緊張感が漂うのは当然か。
「お断りします」
バブさんがきっぱり言うとオッサンは急変。
「下手に出てりゃいい気んなりやがって、てめぇらやっちまえ」
手下は5人。
バブさんがどこまでヤルのか不明だが、なんとかなる数だ。
・・・
こねぇのか?
脂ぎったオッサンを退避させると立ちあがったのはビルドアームだった。
どうする?って振り返るとバブさんは倉庫の中に走りだしていた。
しかし既にオッサンのほうのビルドアームは起動している。
バリバリバリバリっ!
っとシャッターが引き千切られ、
ドガジャン
っと
トレーラーに乗っけられた預かり品を倉庫へ蹴り入れた。
どんがらがっしゃん
整然と並んでいた雑多なものがバラバラと崩れ落ちてくる。
あっちゃー
知らねぇぞおい。



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