星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶−

星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶− 第3巻



起の承章

午後8時。
プププポパピ
紙切れにあった番号をプッシュすると、呼び出し音が3回してから繋がった。
「ノエルです」
間違えたかとも思ったが、電話口の向こうで複数の人の気配がしたから一応聞いてみる。
「榊と申しますが、バーナード・ブラマンテさんいらっしゃいますか?」
はいはい、と気の良さそうな女性の声が遠くなる。
「バブ。あんたにだよー」
電話口を手で塞いでいるんだろう、声がくもって聞こえる。
てぃろてぃろてぃろてぃろりん てぃろりりんてぃろりりん
続いて、『エリーゼのために』のお待たせ音に切り替わる。
腰が砕けそうになるのをこらえつつ待つこと1分ほど。
「どなた?」
男は不機嫌そうだった。
いきなりだったから不思議なことじゃない。
「榊と申します、実は『歩ヒョウ』を。。。」
とそこまで言ったとき遮られた。
「『副業』のことなら明日にしてくれないか、昼の2時か3時ごろなら大丈夫だと思うよ」
副業?
事情はよくわからんが、主導権は向こうにある。
(小桜のオッサンのとこから連絡しとくんだったな。。。)
「あぁ?ザクさんの紹介か?」
ヤベっまたやっちまった。
考えたことが口に出ちまう悪い癖だ。
「オメーよぉそーいうことは先に言ってくれよ」
っと態度は急変。
宿はドコだ?晩飯食ったか?『歩ヒョウ』はどこにある?
と矢継ぎ早の質問攻撃。
とりあえず、今日は遅いから明日話そうってことになった。
変った奴ね。。。ま、そうだな。



次章:起の転章


(c)General Works