星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶−
締の結章 裏（小桜）
俺は弟と病院にいた。
榊がそこにいたからだ。
病院には仲間だと思われていたハルって男が入院している。
「よっ」
俺の挨拶に榊は身構えた。
そりゃそうだろうな。
「おっと、そういうつもりじゃねーんだ」
バンザイの姿勢で敵意がないことを示す。
「ちょっと話いいかな？」
それだけ言って病院を出た。
ついてこないかも知れないが、そんときゃそんときだ。
近くにあるいきつけの喫茶店に入って、いつものボックス席へ座る。
「すまなかったな」
席につくなり俺は頭を下げた。
「うちのモンがひでぇことしちまった」
本来ならイトーを引っ張ってくるとこだが、イトーご一行様は地元へお帰りあそばせちまった。
「ああ」
榊の返事は単なる相槌だった。
ま、しゃーないな。
「。。。でだ、ウチにくる気はねぇーかい？」
回りくどいやり方は得意じゃないからストレートに聞いた。
「いや、なに、うちのバカの一件を除けば別段因縁があるわけでもねーしよ・・・な？どうだい？」
急な話じゃ戸惑うか。。。
「榊さん、気にしなくていいよ。このオッサンが榊さんとやりてぇってだけの話さ」
横からうるせぇのはザク２だ。
「オメェは黙ってろ、他にもやりてぇ奴ぁモッサリいるんだ」
「こんなことなら、最初は下っ端からだろなんて言わなけりゃよかった。。。」
「だからヨ、いいんだぜウチでゆっくりしてって、どうだい？」
実際、言葉通りだから仕方ない。
「そっすか。。。ありがたいんスけど、自分はこのまま廻国を続けようと思います」
「いや、上泉さんとこがヤな訳じゃないんス」
「たぶん、スゲー居心地いいんだろうと思うんスけど。。。」
「上泉さんと手合わせして、なんかこう解かったんス」
「ホントに強い人はいるもんだって、んで、自分がこの人より強くなるにはもっと色々経験しなけりゃって思ったんス」
ほぉ、俺と弟はお互いを見合わせた。
「上泉さんより強くなるか。。。榊よぉ。。。確かに鬼だな」
上泉さんの言葉を思い出す。
「それを聞いてますます手放せなくなっちまったが、まぁ、あのバカじゃあるまいし拉致るわけにもいかねぇや」
ま、ある程度予想はしてたことだ、仕方ねぇ。
達者でなと席を立つ。
「あっそうそう忘れるとこだった」
うっかり忘れそうだった、榊にぴったりの職人がいる。
そこの連絡先を書いた紙切れをテーブルに置いた。
「変わり者だが腕は確かだ、訪ねてみて損はねぇぜ」
さて、榊がどう化けるか。。。世の中、面白れぇことだらけだなオイ。
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