星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶−

星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶− 第2巻



締の転章 裏(小桜)

「鬼ですね」
俺が全ての事情を語り終わった後、上泉さんがボソッとつぶやいた。
「鬼っすか?」
俺は問うた。
「そう鬼です、あの闘いっぷりは闘う事が楽しくてしょうがない奴の闘い方」
「業ってやつかもしれませんね」
「ここにいる連中は大小の差こそあれ『ここ』に鬼が住んでる」
上泉さんはお茶をすすりながら、胸の辺りとポンポンと叩いた。
「榊君と対していると『ここ』の鬼が騒ぎ出すんですよ」
「オレも暴れさせろ!ってね」
カカカと笑いながらまたお茶を一口。
「榊君の鬼が呼ぶんですよ『遊ぼうゼ』って」
そう言われてみれば、そうかも知れない。
思えばイトーの奴も榊の『鬼』にあてられたのかもしれない。
「で、ご相談なんですが、榊をしばらくウチで預かるってのはどうでしょう?」
機嫌の良さそうな上泉さんの様子をうかがいながら聞いてみる。
「アランが踊り出しかねない話ですが。。。無理だと思いますよ」
「榊君には聞いてみましたか?」
上泉さんの問いに俺は、まだですと返す。
「でしょうね。。。ま、ウチは構わないから聞いてみなさい」
湯呑みのお茶を飲み干した上泉さんは最後に、
「鬼のいる場所は常に戦場ですよ」
そう言った。



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