星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶−

星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶− 第2巻



締の承章 裏(上泉葡鵬)

めちゃくちゃな奴だな。
最初は、そう思った。
だが、違う。
これがこの男、榊のリズムだ。
荒削りもいいところだが、うちの下っ端程度じゃ敵わないだろう。
班長クラスでいい勝負ってとこか。
ががががん
と小気味いい攻撃、かと思うと、不意にフェイントを交えてくる。
まったく楽しい。
こちらからの攻撃に対しても、避け、捌き、吹っ飛んだ。
時にはドキリとするような歩法で間接を狙ってきたりもする。
まったく楽しい。
武具を使った攻撃は並以下だが、やはりガンガン攻めてくる。
攻撃に際しての遠慮がない。
まったく楽しい。
ばばばん
がががん
どどどん
ずずずん
無数の攻撃と無数の防御。
密度の濃い闘い。
ん?
ばばばびしっ
どどどがちんっ
速度上がってないか?
ばばばっみしいぃっ
左脇にいいフックを貰った。
何とか左腕でブロックしたものの。。。
みしいぃぃぃっっっ
くぅぅ。いい拳だ。
ぬんっ
と右掌を繰り出す。
最上級の攻撃には最上級の攻撃をもって返すべし。
その場でバラバラになってもおかしくない一撃。
しかし。。。
10数メートル吹っ飛んだ榊の『歩ヒョウ』は・・・立ちあがった。
ほほぅ
世の中広いねぇ、いろんな奴がいる。
カラカラカラカラ
不意に腹部の纏いを解いた榊。
なんだ?
「ありがとーございました」
深く頭を下げるとクルリと振り返って駈けていった。
天晴(あっぱ)れな逃げっぷりだ。
私は破壊された左腕を再確認して、大人気なく大笑いした。



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