星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶−

星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶− 第2巻



結の転章 裏(小桜2)

ちっ、始まっちまってるなこりゃ。
誰もいやしねぇ。
上泉家へ戻ったものの、人影はなかった。
おっ!
「静ちゃん静ちゃん。兄貴みなかったかい?」
お手伝いさんの静(しず)ちゃんがいたので聞いてみる。
「皆さん裏の方へ行っちゃいましたよ。『百人クミテ』の練習?とかみたいですよ」
ありがとね、と返してから車へ戻る。
どうするどうする?
車を走らせながら考える。
旧ザクの携帯につながらない以上、こっちで状況判断しなけりゃならない。
まったく。。。裏の方ってーと、あそこらへんだな。
見当を付けた地点から少し手前で車を止め、荒地を走った。
ガツンガツン。。。遠くから響いてくるのは、『歩ヒョウ』同士の打撃音。
上に乗っているのがイトーのバカの『歩ヒョウ』だから、下の『歩ヒョウ』が榊だろう。
しゃーねぇな。
俺はできるだけ目立たないように近付く。
みんな、榊とイトーの方を見てるだろうから大丈夫だろう。
さて、かなり近い。
20メートルってとこか。
1日に2回も『歩ヒョウ』を纏うなんて久しぶりだな。
(いっとくか、『影』!)
俺の『歩ヒョウ』=『影法師(カゲホウシ)』の出現を目にしたヤツがいたら、何もないところから黒っぽい『歩ヒョウ』が突然現れたように見えたろう。
擬態法いわゆる『陰の術』を使っているからだ。
ガチン
とタックルをかまして榊とイトーの『歩ヒョウ』を吹っ飛ばすと榊の『歩ヒョウ』に組み付いた。
カカラカラカラ
と腹部を開いて。。。一応、背中から乗り込むことになってはいるが、腹部からでも入り込めるようになってる。。。榊の『歩ヒョウ』を自分の拳で叩く。
どどん
気付いてくれよ榊!



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