星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶−
転の起章 裏(小桜)
俺は、何気なく正面玄関の前にいた。
イトーのバカの話が本当なら、榊の兄ちゃんが現れる筈だ。
(まさかな。。。)
自分がバカになっちまったんじゃないかと思いながら、ウロウロする。
(俺も年かな?)
と、正面玄関のモニターを見るとそこには榊の兄ちゃんが立っていた。
ご丁寧に『櫃』まで一緒ときてやがる。
(オイオイ、マジっすか?)
怖い顔で、門を睨み付けている榊の兄ちゃん。
俺がガチャリと開けたのは通用門だ。
「よぉ榊くん 道場破りだそうじゃねぇか」
カカカと笑いながら、出迎える。
ま、いい。
こういう状況だから逆に楽しんでやろう。
「大きな声じゃいえねぇが、大歓迎だぞ」
怖い顔の榊に近づきこそっと耳打ちした。
とりあえず、入った入ったと榊を招き入れていると、イトーのバカが割って入ってきやがった。
「勘弁してくださいよザクさん」
なんだこのヤロウ。
ヘラヘラ笑いながら強引に割って入るイトーに舌打ちする。
「てめぇこの野郎、ハルはドコだ、えぇコラ!」
イトーのバカが榊に詰め寄られている。
なんだぁ?
「おいおい、どした?」
只ならぬ雰囲気に割って入る。
「なんかあったのか?」
オレの問いに、
「ザクさん、何もねーっすよ」
オメーにゃ聞いてねーよ。
しかし。。。くせぇなこのヤロウ。。。
「そうかい?だいたい段取りはできてるんだ、後は主役を待つばかりってな」
俺は逆に声を張り上げて榊を奥へ迎え入れた。
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