星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶−

星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶− 第2巻



締の結章

小桜に運び込まれた病院だ。
知ってて当然。
こういう展開もあるだろうと、自然に身構える。
「おっと、そういうつもりじゃねーんだ」
太った方の小桜が両手を上げてバンザイの姿勢をとった。
「ちょっと話いいかな?」
俺がうなずくと、先導するように病院を出た。
このまま逃げちまってもいいが、ハルの野郎も気になるし逃げ切れるとも思えない。
上泉さんのところへ行くのかとも思ったが、近くの喫茶店に入った。
「すまなかったな」
小桜は、いきなり謝ってきた。
「うちのモンがひでぇことしちまった」
誤解と勘違いと悪意と善意が入り混じってるからなんとも返答に困る。
「うむ」とか「ああ」とかいう曖昧な返事になっちまった。
「。。。でだ、ウチにくる気はねぇーかい?」
小桜のオッサンは探るように聞いてきた。
「いや、なに、うちのバカの一件を除けば別段因縁があるわけでもねーしよ・・・な?どうだい?」
(バカの一件を除けば、だな)
「榊さん、気にしなくていいよ。このオッサンが榊さんとやりてぇってだけの話さ」
小柄な小桜がちゃかすように言う。
「オメェは黙ってろ、他にもやりてぇ奴ぁモッサリいるんだ」
「こんなことなら、最初は下っ端からだろなんて言わなけりゃよかった。。。」
「だからヨ、いいんだぜウチでゆっくりしてって、どうだい?」
小桜のオッサンは必死だ。
昔から、ちっと変わった連中に妙に気に入られる事が多い。
今回はかなり気に入られちまったらしい。
「そっすか。。。ありがたいんスけど、自分はこのまま廻国を続けようと思います」
「いや、上泉さんとこがヤな訳じゃないんス」
「たぶん、スゲー居心地いいんだろうと思うんスけど。。。」
「上泉さんと手合わせして、なんかこう解かったんス」
「ホントに強い人はいるもんだって、んで、自分がこの人より強くなるにはもっと色々経験しなけりゃって思ったんス」
小桜達は驚いたように互いを見合わせた。
「上泉さんより強くなるか。。。榊よぉ。。。確かに鬼だな」
最後の一言はもう一人の小桜への言葉だった。
「それを聞いてますます手放せなくなっちまったが、まぁ、あのバカじゃあるまいし拉致るわけにもいかねぇや」
達者でなと席を立つ小桜達。
「あっそうそう忘れるとこだった」
と、ポケットから紙切れを取り出してテーブルに置いた。
「変わり者だが腕は確かだ、訪ねてみて損はねぇぜ」
そこにはとある連絡先が記されていた。



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