星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶−

星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶− 第2巻



転の起章

俺は上泉家の門前にいた。
インターホンを押すまでもなく通用門が開く。
(いっちょ暴れてやるか)
と気合を入れる。
「よぉ榊くん 道場破りだそうじゃねぇか」
かかかっと笑いながら出てきたのは小桜のオヤジであった。
あーん?
なんだそりゃ。
「大きな声じゃいえねぇが、大歓迎だぞ」
耳元でぼそっといったつもりだろうが、十分大声だ。
あ?
いいからいいからと奥へ通す小桜。
そこへ割って入ったのは、イトーというゲス野郎だ。
「勘弁してくださいよザクさん」
にやにや笑っちゃいるが、顔は引きつっている。
「てめぇこの野郎、ハルはドコだ、えぇコラ!」
イトーの胸座(むなぐら)を掴んでガックンガックンさせる。
「その話は後だ、小僧を無事返してほしけりゃオトナシクしてなっ」
イトーはガックンガックンなりながら、ぼそぼそ言うと嫌な笑いを口元に浮かべた。
「おいおい、どした?」
小桜のオッサンが割って入る。
「なんかあったのか?」
心配そうに俺に問い掛ける。
「ザクさん、何もねーっすよ」
聞かれてもいねぇのにイトーが返事をする。
非常にヤバイ展開だ。
「そうかい?だいたい段取りはできてるんだ、後は主役を待つばかりってな」
小桜は踊り出しかねない勢いだ。
こいつを信用しかけた俺がバカだったか。。。



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