星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶−

星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶− 第2巻



起の起章

「・・・のぉ、つきましたよ」
面倒臭そうな声がする。
「ぬぁ?」
俺はそう言ったに違いない。
意味は、ナンダコノヤロウである。
「上泉さんのお屋敷の前ですよ、お客サン」
上泉。。。上泉。。。あ
がばっ
っと置きあがった俺にタクシーの運ちゃんは高くも安くもない金額を告げた。
「お客サンも『ヒョウ師』っすか?」
さっき聞かれたような気もするが、なんて答えたか覚えてない。
ま、いいか。
俺は運ちゃんに告げられた金額を渡し、タクシーを降りた。
ばーん
効果音をつけるならそんな感じだ。
でっかい門と長い塀。。。
時代劇チャンネルのチャンバラ番組もかくやという代物である。
(さて)
『ヒョウ師』っていや上泉だろってことで、コロニー『ユーラシア』のカザンまできちまった訳だが、先のことは考えちゃいなかった。
(どうするかな。。。)
当然のことながら、「受付はこちら」なんて張り紙がしてあるわけでもなく、表札に上泉とあるだけである。
(道場破りじゃないんだし、たのもーってのもな。。。)
あれこれ考えた挙句出直すことにした。
(まっ場所は分かったし、また考えてからこよう)
っと踵を返したその時、後ろから近づいていた5人とぶつかりそうになった。
「おっ、失礼」
俺の言葉に返されたのは、軽蔑のこもった視線だった。
ご丁寧に5人とも同じ視線をよこしてきやがった。
(感じ悪りぃな)



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