星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶−

星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶− 第1巻



転の承章

がらがらがらがら
子供がオモチャ箱をひっくり返したような音だった。
(派手な音しやがるな)
オレは内心舌を出しながら、『そいつ』を解(ほど)いていった。
がらがらがらがら
この場で、いま何が起ころうとしているのかを理解しているのは、オレとナオの二人だけだった。
「いってくらぁ」
暗闇に膨れ上がる闇に視線が集中する中、俺は立ち上がりつつある闇の中心へ駈けてゆく。
がらがらがらがら
目を凝らせば、青?いや、青銅を思わせる色であった。
(よろしくなっ)
俺は心の中で、そいつに挨拶する。
それは、そいつに眼があったからかもしれない。
しかも、3つも。
(いいねぇ)
その特徴的な顔面の向こうでぞわっと揺れるのは頭髪?
(上等だ、イカレてやがる)
開いた胸部に飛び込むと、俺は久々の感覚を確かめた。
服屋で試着するかのように。。。
(いいねぇ、ジョウトウだ)
ぎりり
と拳を握り締め。
がじゃん
と壊れた入り口を粉砕した。
街頭の明かりに照らされた『俺』=『歩ヒョウ』は白蓮を背負っていた。
それが『歩ヒョウ』の証であるかのように。



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