星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶−

星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶− 第1巻



転の起章

ババリババッ
ドドガジャン
派手な音を立てながら建物が破壊される。
少し前に流行ったリフォーム番組で見たことのある光景。
ただ今回は、住みやすく改装しようって意図はまったくない。
「げほげほっ 殺す気かぁ!」
情けない声を上げたのは、もちろんゴーチェだ。
もともとゴーチェの『やっちまえ』からの出番だから文句は言えないハズだが、そのへんがゴーチェのゴーチェたる所以(ゆえん)だろう。
人質にとったタケの首にナイフを突き立てたままゴーチェご一行は入り口を破壊した仲間の方へ移動してゆく。
「さて、どうしたもんかな」
その様子を目で追いながらナオがつぶやく。
「どーしたもんかな」
小さい女は楽しそうな雰囲気に戻っている。
「ゴーチェがタケを捕まえちまったのは予想外だが、たぶん成り行きだろう」
「このまま逃げちまっても、結局タケを持て余して逃がすことになるんだろうが。。。」
ゴーチェが仲間と合流するまで、あと数メートル。
俺は、さっきから気になっていたことを聞くことにした。
「なぁナオさん、あの『櫃(ひつ)』あんたのかい?」
入り口。。。いや、もと入り口付近で布を掛けられている四角い箱。
「ほぅ あんた『ヒョウ師』かい」
ナオはニヤリと悪い微笑みを浮かべた。
「あいつは遊びでこさえた代物でな、オレはさしずめ『纏職人』ってとこだ」
遊びでこんなもん作るやつなんざ聞いたことがない。
まあ、この際その辺のいきさつは置いておくとしよう。
「いいぜ」
ナオがオレの肩をポンと叩く。
「へへっ」
オレは獰猛な笑みで返した。
それは巨大な猫科の肉食獣の笑みであった。



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