星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶−

星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶− 第1巻



承の転章

そこは絵に描いたような定番のアジトだった。
「ここなら安心だ」
『ナオさん』が三文小説のような定番の台詞を口にする。
「あんしんだぞ」
現実味のない小さい女はやはり嬉しそうだ。
「さて。。。どこから話したもんかな」
『ナオさん』は奥の冷蔵庫から冷たい麦茶のポットを取り出していた。
小さい女はどこから持ってきたのかグラスを3つテーブルに並べている。
酷く場違いなようでもあり、この場には似合っているようにも思えた。
要するにオカシナ雰囲気な訳だ。
「で、話を聞く前に今なら、知らなかったことにできるが。。。」
探るような『ナオさん』の視線に肩を竦めて、続けてくれと返す俺。
女はソファーの上で小さく跳ねた。
やっぱり楽しそうだから、よく分からんがきっと喜びの動作なのだろう。
「ナオだ、よろしくな」
そういえばまだ名乗っちゃいなかった。
「藤十郎だ、よろしく」
俺達が握手すると、小さい女がその上に小さな手を乗せた。
「サエだよ、よろしく」
やっぱり楽しそうだった。



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