星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶−
起の転章
男が弱かった訳じゃない。
闘う者のテンションとしては最悪の状態であったことと、俺が相手だっただけだ。
一発の拳で意識を吹っ飛ばされた男は、両膝をカクンと落とし顔面から地面に崩れた。
マンホールでも覗きこんでいるような態勢。
かっちょ悪ぃがそれが現実だ。
「へ?」
近場のもう一人が現実を認識するまで数秒。
習慣ってのは恐ろしいもんだ、身体が勝手にファイティングポーズを取った。
(残念。。。)
降りかかる火の粉は掃いましょう。
腹に一発食らった男も、さっきの男に続いた。
ただし今度は、地獄の苦痛にうめいている。
「で。。。なんか文句でもあんのかい?」
同じテンションで俺が言う。
おびえた小鹿ってモノマネをする三流芸人をみたことがあるが、いまのゴーチェはまさにそれだった。
「おぼえてろよ、コノヤロゥ」
コメディ映画のように走り去るゴーチェを任侠映画のような男達が仲間を引きずり追いかける。
なんだかなぁ。
残されたのは俺と男であった。
ジーンズにスニーカー、綿シャツ。髪は短く緑色であった。
(どうしたもんかな。。。)
男に対するひとこと目を考えていると背後に気配を感じた。
ゴーチェが仲間を呼んだにしては早すぎる。
振り返ると、10数メートル向こうに7、8人の人影。
「まいったなぁ」
緑の髪の男の言葉。
(まいったなぁ)
同感だ。
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