星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶−

星乱拳客伝 外伝 −鋼の記憶− 第1巻



起の起章

「・・・のぉ、すいませんが」
どこかで誰かが話している。
(ん?)
「お客様、そろそろ閉店のお時間ですので・・・」
どこかってのは俺の右後ろらしい。
(ぁ?)
「あの・・・お客様・・・」
ああ、思い出した。
仕事が終わって、たまには外で飲んでやろうとふらりと立ち寄った店、そこで・・・
「おっ すまねぇな」
意外にしっかりした言葉にほっとしたのか、閉店時間が過ぎていることを苦笑いを浮かべながら話すバーテンダーに詫びの分を多めに加えた金額を渡した。
「また、くるよ」
俺はしっかりした足取りで入り口のドアをくぐった。
お待ちしてます。の声が少し遅れたように感じたのは酔っているせいか、バーテンダーの心の問題か不明である。
B1Fにある店から地上で出る階段を既に片付けられている看板の横をすり抜けながら登ってゆく。
(ん?)
話声が聞こえる。
裏通りとまでは言わないが、表通りから1本入った店の前。
周りの店も既に明かりは消えている。
そこで聞こえるには相応しい声であった。
「だからよぉ、しらねーっつってんだろ」
男の声。年齢は20-40代ってとこか、しゃべっている内容とは違い声は落ち着いている。
(こういう状況には、慣れてるらしいな)
俺は、トラブルを避けるべく足音を忍ばせ地上へ出た。
「はいそうですかって訳にゃいかねぇんだよ」
一定間隔をおいて立つ街灯が闇を一層深いものにしている、その暗い闇の方へ向かいかけた俺。
「おい、そこの。ちょっと待ちナ」
おい、そこのって呼ばれたことが無かったの俺は、そのまま歩みを進めた。
「待てっつってんだろが あァ?」
今日のトラブルは4人のチンピラの姿をしていた。



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