星乱拳客伝 外伝 天道幻夢団

星乱拳客伝 外伝 天道幻夢団 虹色の巻



第9章

「止まりなさい」
警備員が言う。
止まれと言って止まるようなら最初から動きはしない。
仮面の男は足元のうねくったダクトやパイプが存在しないかのように滑らかに動いた。
一方警備員は、障害物の多い屋上、しかも、真夜中である。3人で包囲しようと動くのだがなかなか思うように移動できない。
「止まりなさい」
腰の麻酔銃に手をかけたその瞬間であった。
空中に気配を感じ視線を上へ移動させる。
それは。。。巨大な仮面であった。
少なからず驚いた彼等に仮面は別れの言葉も告げず消え去る。
「ちっ」
時間稼ぎか。。。
実際の仮面の男を目で探すと屋上端の柵を乗り越えているところであった。
「止まれぇ」
口調は命令に変わっていた。
腰の麻酔銃を抜き仮面の男へ向ける。
ためらいはなかった。
それは、目標が仮面をつけていたからかもしれない。
トリガーを引き絞ると、子供のクシャミのような音と共に麻酔薬が塗られた針が飛翔を始めた。
射撃の腕は悪くはなかった。
しかし麻酔薬の塗られた針は、仮面の男をかすめるようにして夜空へ吸い込まれた。
闇夜へ身をあずける仮面の男。。。
(いっそ、このまま消えちまえばいいのに)
警備主任であるバラカンは、なぜかそう思ってしまった。



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