星乱拳客伝 外伝 天道幻夢団

星乱拳客伝 外伝 天道幻夢団 虹色の巻



第3章

会社の取引先からもらったというチケットは2枚。
二人でいってきなさいと言う父の本心は、家でゴロゴロしたいからである。
そういう訳で、セイラは母に連れられて港に繋留してある巨大な船にいた。
公演を開催するにあたり場所が確保できなかった場合、この船で公演を行うようになっている。
ぞろぞろと人の列が奇妙な宇宙船に飲み込まれていく様はハーメルンの笛吹きのようでもあった。
「すごいねぇ」
客を収容することを前提に作られた通路は怪しげな装飾で彩られ、ホログラムのピエロがもてなしていた。
「やぁ」
不意に現れた仮面のピエロはセイラの眼前にしゃがみ彼女にだけ見えるようにその仮面を一瞬外した。
仮面などなくても彼女は、その香りを忘れてはいなかった。
「あぁーっっ」
(赤いおにーちゃん!)
「楽しんでいってね」
ピエロは体重がないかのごとくその場を去った。
「本物のピエロさんもいるのね!」
母はピエロがセイラの知人であるとこなど知りようもなかった。



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