星乱拳客伝 外伝 天道幻夢団

星乱拳客伝 外伝 天道幻夢団 緋色の巻



第11章

それは美しい光景であった。
黒いビロードの上に宝石をばら撒いたような星空。
その星々の中を自らもその星屑の一つとして船が青白い炎を引いていた。
天道の船『幻夢(げんむ)』である。

「ご苦労様でした」

いつもの微笑を思わせる柔らかな声がした。
天道である。

「いえ・・・」

申し訳なさそうな感情を含んだ女の声であった。
タリである。
天道の部屋へ呼び出されたジルガとタリは「仕事」の報告をしていた。
・・・といっても話しているのはタリだけであったが・・・
仕事の後に起こった一連の騒動についても、隠さず話した。
天道に隠し事は無意味である。
タリが全ての話を終えるまで天道の表情に変化は無かった。
・・・少なくともタリにはそう見えた。
ご苦労様でした
その言葉に続く言葉を待っていたタリとジルガ。

「どうしたのですか。何か言い忘れている事でも?」

問われてタリとジルガは沈黙した。

(いえ・・・すべてタリの話した通りです)

ジルガが手話で話した。
常に顔を合わせている天道等であれば会話を『読む』事は可能である。

「ご苦労様、ゆっくり休んでください」

ジルガのために口調を遅くするでもなく天道が言うと、
二人は一礼して部屋を出た。

はぁぁ・・・

深いため息は本当に「仕事」が終わった合図であった。



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