星乱拳客伝 外伝 天道幻夢団
第5章
猛烈な縦Gが男=ジルガの内臓を押し上げる。
ギュン
巨人が夜の闇を滑り落ちる。
ギュン
闇を纏った巨人の手には一本のワイヤーが握られていた。
ギュン
「仕事」を終え戻る途中であった。
港近くのビル屋上からワイヤーを使って降りるような「仕事」である。
『歩ヒョウ』を纏って・・・
その時ジルガの下方、相棒のタリの『歩ヒョウ』がチカチカッと光った。
『光信』と呼ばれる通信手段である。
「危険」「飛べ」
そういう内容である。
判断の直後、闇夜に身を委ねたジルガの『歩ヒョウ』。
その手のワイヤーはフリーな状態になっていた。
(ワイヤーが切られてる・・・バレたか・・・)
どすん
どすん
と着地した『歩ヒョウ』が二体。
隠密をもってよしとする基本からは大きく外れているが、それも仕方のない状況が待ち構えていた。
「そこのビルドアーム止まりなさい」
偶然にしては都合のよすぎるタイミングで警備用のビルドアームが二台近づいてくる。
「逃げるぞ」
二体の『歩ヒョウ』が同時に煌(きらめ)いた。
踵(きびす)を返す『歩ヒョウ』。
「待て」
走り出すビルドアーム。
待てと言われて待つようなら初めから逃げはしない。
それに、待つ必要もないだろう。
彼等は『歩ヒョウ』なのだから。
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