星乱拳客伝 外伝 天道幻夢団

星乱拳客伝 外伝 天道幻夢団 緋色の巻



第4章

トモちゃんはサーカスで大いにはしゃぎ、帰りは父の背中で眠ってしまった。
家に帰りパジャマに着替えさせられた彼女はベッドで再び眠りについた。
深夜。
午前2時前。
あまりに早く眠ったためであろうか、目が覚めてしまったトモちゃん。

「といれ・・・」

隣の母を起こさずとも、一人で大丈夫な年齢である。
パタパタと小さな足に大きなスリッパで廊下を歩く。
トイレを済ませ、部屋へ戻ろうとしたその時、ふっと暗くなった。
小さな頭脳は無意識に暗くなった方向、窓の外をへを意識を向ける。

「ん?」

寝ぼけたままの小さな頭脳は奇妙な違和感を覚えていた。

「くらいなぁ」

夜が暗いのは当然である。
しかし、トモちゃんが見つめている窓の外は暗すぎるのである。
濃密な闇であった。
と、不意にその闇が揺れた。

「え?」

ぐらりと軽い揺れを残して闇は窓を離れ人型へと変じた。
巨大な人型である。
それがトモちゃんのいる窓の外側に張り付いていたのである。

「なに?」

窓へと歩みより落下していった人型を目で追うトモちゃん。

「え?」

その目前を再び闇が覆った。
巨大な人型の闇。
不思議と恐怖はなかった。
2つめの人型もまた下方へと移動してゆく。
急速に遠ざかる闇を纏った巨大な人型。
その人型が大きな手を小さくふったようにトモちゃんには見えた。

「ばいばい」

風景に溶け込んだ人型に手を振り再びパタパタ歩きだすトモちゃん。
闇は闇に帰ったのである。



次章:第5章


(c)General Works