星乱拳客伝 外伝 天道幻夢団
第3章
そこは異空間であった。
軽業、ジャグリング、動物、ピエロ。
映像デバイスで見たことのあるものばかりであった。
しかし・・・今まで見たものはマガイモノであるかのように思えた。
本物の迫力、場の雰囲気。
体に感じられる音や空気の震え。
映像デバイスでは表現できない色のグラデーション。
そして、臭いまでもが、これこそが本物だと知らせている。
(すげぇ・・・)
トモちゃんの父親は全てのことを忘れて見入っていた。
「あの人に、しってるよ」
隣でトモちゃんが指差す。
数人の男女がトランポリンやシーソーを使って技を披露していた。
「いちばんおっきい人に、かみ、もらったんだよ」
4人の男がそれぞれ肩の上に立ち塔を作っている。
その一番下にいる、巨人のことらしい。
「あの人なまえ、なに?」
問われて知っている筈もない父親。
ここで知らないと答えると、なんで知らないのとゴキゲンを損ねることになる。
「さぁ、なんていうのかな?」
娘の攻撃を回避した父は横一列に並んで礼をした彼等へ拍手を送った。
「ばいば〜い」
娘は悩むことに飽きたのであろう、無心に両手を振っている。
と、娘に気付いた訳ではないのであろうが、巨人がこっちへ向かって大きな手を小さく振ってから舞台から去っていった。
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