星乱拳客伝 外伝 天道幻夢団

星乱拳客伝 外伝 天道幻夢団 藍色の巻



第15章

カサバルト・ブルコフが意識を取り戻したのは、車の外であった。

「大丈夫ですか?」

公園脇のバス停のベンチに横たえられたブルコフの目に映ったのは
運転手兼ボディガード、イヴァンの四角い顔であった。

「何事だ?」

イヴァンに問いながら口中にドロりと嫌な感触。
口の中を切ったか、鼻血が流れ込んできたものか。
勢いよく吐き出したつもりだったが、どろりとした血は、だらしなく頬を伝った。
お怪我でも、とイヴァンが更に心配そうに言うのを無視して、どういう事だと問うた。

「突然、あれが・・・」

イヴァンが上体をずらして後ろの光景をブルコフに見せた時、藍色の『歩ヒョウ』は空中にいた。

「なんだ・・・あれは・・・」

たぶん『歩ヒョウ』です、と返すイヴァンにそんな事はわかっとると怒鳴るブルコフ。

(どこのどいつだ、『歩ヒョウ』なんぞよこしおったのは)

「あいつを捕らえられるんだろうな」

ブルコフは頭の中に、報復すべき人間のリストを作成しながら問うた。

「はい、うちの精鋭が・・・」

そういう間に、一体のビルドアームが白煙を上げた。

「貴様、本当に・・・」

そういう間に、残りのビルドアームが倒れた。
顔を見合わせたブルコフとイヴァン。
ブルコフの顔は赤く、イヴァンの顔は青かった。

「失礼します」

短く言うと、イヴァンはブルコフを抱きかかえ走り出した。
二人が20メートルほど進んだ時、ブルコフの車もまた白煙を上げた。
理由は言うまでもなくボンネットに突き立った『歩ヒョウ』の長剣であった。



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