星乱拳客伝 外伝 天道幻夢団

星乱拳客伝 外伝 天道幻夢団 藍色の巻



第9章

夜。
家々の明かりが人工の星々となり頭上の地表を彩る。
その星々の間を移動する光点。
二台の車両であった。
前方の一台は大型車両。
後方の一台は闇夜の紛れてしまいそうな黒塗りの高級車であった。
家路へ向かうのか人気のない工業区域から静かな住宅区域へと二台の車両の移動は続いた。
方側一車線の道路をかなりのスピードで飛ばして行く。
ブロックを組み合わせたかのような集合住宅を右手に見ながら正面の公園を左に曲がる。
さらに数百メートル直進すると正面に学校が見えるが、道は緩やかな右カーブを描きつつ小学校のグランドを左に、公園を右に続いていた。
いつもの帰り道であった。

「あと10分か・・・」

カサバルト・ブルコフは重そうな腕に付けた重そうな腕時計を見て、重そうなため息をついた。
正直なところ家になど帰りたくはなかった。
金の事しか頭にない妻。
頭の中に何もない息子。

「最悪だな」

そんな最悪の奴等になど、びた一文使いたくはなかった。
ましてや、慰謝料などという名目で莫大な額を支払うなど・・・
例え、どんなに汚い金であろうと、いや、自らの手を汚し手に入れた金であるからこそ自分だけのものにしたいのだろうか。
だから、週に二日『だけ』帰るのだ。

(弁護士先生・・・早いとこ頼むぜ)

家に入るその時まで、妻子のことは考えまいと努力しながら車のシートに沈み込んだその時であった。

どガシャ

破壊音にエアバッグが膨らむ音が重なりブルコフは気を失った。



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