星乱拳客伝 外伝 三つ目 廻国編
六の巻
第5章
俺達3人は、車を降り歩き出した。
前後には特徴のないスーツ姿の男が二人づつ。
車に乗せっぱなしの俺と茜の『櫃』が気になったが、そんなこと言える雰囲気じゃない。
そんなことを考えていると、男達を乗せたバンの片方が横を通り過ぎる。
横のザクをチラ見すると「いっときます?」というような視線をよこした。
俺は軽く首を横に振り否定の意志を伝える。
ザクは微かにアゴを引き了解の意志を返した。
実際のところ、ここで何もないと手詰まりだったし、前後の男達から漂う雰囲気が敵ではないような気がしていたからだ。
と、俺達は朽葉さん宅の通用口を潜り中に入った。
(朽葉さん。。。これじゃ連絡つかねぇな。。。)
「ねぇ、ダイジョウブなの?」
茜が俺とザクのシャツを引っ張りながら小声で言うのを無視しつつ進むこと2、3分。
俺達3人はある部屋で待つことになった。
小さなちゃぶ台の上には湯飲みと急須、茶筒にポットにお煎餅。。。温泉旅館じゃあるまいし。
「まっ、お茶でもいれるか」
俺はそう言ってポットを引き寄せるのを火を噴きそうな視線で茜が睨みつける。
「そんなに落ち着いてていいの?それに、毒とか入ってるかもしんないよ!」
とんでもない事をいいやがるが、まぁそういう考え方もあるって事だ。
茜の考え方を否定はしないが、もし、ここで毒なんざ盛るくらいならもっと早く別の手でいくらでもやりようがある。
バリッ
横で煎餅をかじるザクも同意見のようだった。
「けっこういけますよ!」
ザクの言葉に追い討ちをかけられて茜が完全にそっぽを向いた。
その視線の先にいたのは。
「お爺ちゃん、誰さ?」
茜の言葉に、口元をほころばせたのは。。。
「朽葉さん!」
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