星乱拳客伝 外伝 三つ目 廻国編
五の巻
終章
「もう一回!」
コロニーに落下を続ける茜の『歩ヒョウ』を乗せた『特機』。
それを救うべく飛び出した蘭丸の放った一本のワイヤーは、その表面で弾かれた。
しかし、その振動に気付いた茜が振り返る。
「もう一回!」
その蘭丸の叫びは振り返った茜へ再びワイヤーを放った時であった。
キゥン
空気を切り裂きワイヤーの尾を引きながら分銅は飛んだ。
「いけ!」
3メートル
5メートル
そして
10メートルと少し。。。『特機』まで数十センチのところで分銅は跳ね返った。
ワイヤーの長さの限界であった。
「くそっ」
奥歯を噛む蘭丸の頭上を黒い陰が横切る。
ごっ
音は遅れてやってきた。
「ザク!」
小桜の小型機であった。
その無骨な船体が無駄のない動きで茜の『歩ヒョウ』を乗せた『特機』へ近づき相対速度を合わせると、赤い『歩ヒョウ』も慣れた手つきでハーネスで『特機』を固定した。
「ふぅ。。。」
蘭丸はワイヤーを回収しながら一つ溜息をつき「仲間」の存在を少しうらやましく思っている自分に苦笑した。
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