星乱拳客伝 外伝 三つ目 廻国編
五の巻
第9章
蘭丸の駆る『歩ヒョウ』=『鈴音』の前は道があった。
『歩ヒョウ』と同じ素材である『HT』の道。
数秒前には無かった道。
蘭丸の思った方へ伸びる道。
「こいつは。。。使える!」
応急修理用の布状の『HT』を目にしたとき咄嗟に思いついた手である。
目指すは、ガス欠でコロニーへ落下中の『歩ヒョウ』=『猩々』。
するすると伸びる道は着実に『猩々』との距離を縮めつつあった。
しかし。。。
(!)
道は突然途切れた。
巻いた布状の『HT』は、ついにその端まで伸びきったのである。
「ちっ」
小さく舌打ちすると、腰から分銅の付いたワイヤーを取り出す。
キゥン
空気を切り裂き、『猩々』を乗せた『特機』へと伸びるワイヤー。
「いけっ!」
。。。ギィン
分銅は『特機』の表面を弾いた。
「もう一回!」
今の衝撃に気付いたのだろう、茜の『歩ヒョウ』=『猩々』がこっちを振り向いた。
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