星乱拳客伝 外伝 三つ目 廻国編
五の巻
第4章
「これがコントローラね」
ザクが茜に手渡したモノはスティック状の操縦桿のグリップ部分だけを切り離したような代物であった。
グリップの下部から伸びるコードは有線式のマイクに見えなくもない。
「上のボタンを押し込めば加速、放せば出力カット」
「簡単でしょ?」
ザクの説明にウンウンと頷く茜は早くもテンションが上がっている。
きっと話半分。。。というか、聞いていない状態なのは周囲の人間はよ〜くわかっていた。
「グリップの下を捻るとスイッチになってて、これがエンジンのスターターになってるんだけど、そこまで調整してないから、今回は手動ね。。。って聞いてないよね?」
ザクは肩をすくめると、『特機』に近づいてゆく。
エンジンは既にセット済みであった。
「火いれるよ」
ゴフッ
と意外に小さい音がすると、
ふぉふぉふぉふぉふぉふぉふぉふぉ
と規則正しいアイドリング音が続いた。
「ゆっくりボタン押し込んでみて」
ザクの言葉に、
「は〜い!」
とやけに素直な茜。
ふぉふぉふぉ
ふぉるふぉるふぃぃぃぃぃぃぃ
と出力が上がってゆく。
「いい音してるじゃねえか」
蘭丸が感心するとザクは満更でもなさそうだった。
「でしょ?」
「で、こいつの出力じゃぁ1G環境下での自立浮遊はできないから、基本的に無重力状態での運用のみね」
「双葉ちゃんから『特機』について聞いてると思うけど、方向を決めるのは『特機』だからコントローラを動かしてもなんともならないから気をつけて」
「方向は『特機』後方のフィンで調整すようになってて、今は全部閉じた状態になってる。。。って聞いてないよね?」
(c)General Works