星乱拳客伝 外伝 三つ目 廻国編
五の巻
序章
そのコロニーは回転を止めていた。
コロニー「カンダ」。
第一世代のコロニーであり、老朽化と機関部の重大な不具合により解体されることとなったコロニーである。
「しかし、よく入れたもんだな」
重力のなくなったコロニー内部に浮かんでいるのは外洋クルーザー「グリソム」であった。
「そのへんは、クライアントの力だよ」
ハンスの問いに、梅田はまるで自分の手柄であるかのように返す。
「考えてみりゃ、爆破する訳じゃなし、慌てる必要はなかったな」
グリソムの周囲にも何隻か船が停泊しており、荷物を積み込んでいる。
コロニー「ニュー・カンダ」へ移設する建物をはじめとした無重力でないと運び出せないような「大物」を運び出している船であった。
「で、目的地は。。。この辺だったよな」
ゆっくりと船を進めながらハンスが外部カメラをチェックする。
「。。。っと、そこの三角屋根の隣ですね」
梅田の指示にハンスがグリソムを停止させる。
「うっし、到着。で、うちのクルーの皆さんは?」
ハンスが熊のような体で伸びをしながら梅田を振り返ると局長は肩を竦めていた。
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