星乱拳客伝 外伝 三つ目 廻国編

星乱拳客伝 外伝 三つ目 廻国編

四の巻


第8章


双葉は刺又(サスマタ)を構えた姿勢で事の成り行きを見守っていた。
茜が飛び出し、蘭丸も敵を迎えに出た。
船を傷つけさせない。
その思いによる行動であろうが、最後まで残る者も必要であろう。
それが自分であることを自然と受け入れていた双葉である。
敵は強い。
遠くで茜が、少し向こうで蘭丸が、敵と対した時の双葉の印象である。
いや。。。より正確に表現するなら、巧い、といったところだろうか。
急接近するビルドアームに対して手にした刺又(サスマタ)を構えなおす。

「ここは私が、守る」

声に出して言うと、双葉は戦闘モードに切り替わっていた。
油断なく視線をビルドアームに向ける双葉。

(早い。。。5秒ってとこか)

相対速度が大きい。

4秒

最初の一撃が勝負であること双葉は直感的に感じていた。

3秒

両足の指でグリソムの甲板をぎゅっと掴む。

2秒

ふっと息を吐き、堅くなっていた体をほぐす。

1秒

「しゃぁーっ」

裂帛(れっぱく)の気合と共に跳ねあがった刺又(サスマタ)は狙い違わず迫り来るビルドアームを貫いた。
。。。ように見えた。

ぎんっ

(なっ)

ビルドアームは眼前で掻き消えていた。
いや、そんな筈は。。。
刺又(サスマタ)を引き戻しながら振り返るとグリソムの艦橋に刃を突き立てた姿勢のビルドアームがそこにいた。
完全に負け。
双葉に対したビルドアームは刺又(サスマタ)を間一髪でかわし、双葉の後方で急制動をかけグリソムの艦橋を狙ったのである。
『歩ヒョウ』=『ディアブロ』の中の双葉が、その事を知ったのは、この少し後のことである。



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