星乱拳客伝 外伝 三つ目 廻国編

星乱拳客伝 外伝 三つ目 廻国編

四の巻


第7章


サルバドール級外洋クルーザー「グリソム」。
その甲板上には二体の『歩ヒョウ』が立っていた。
蘭丸の駆る『鈴音』
双葉の駆る『ディアブロ』
対するは、二体の所属不明ビルドアーム。
両者の距離は50mを切っていた。
蘭丸が右をちらりと見ると双葉の『ディアブロ』が地獄の番人が如く巨大な刺又(サスマタ)を構えていた。
少し笑みを深くして蘭丸の『歩ヒョウ』=『鈴音』は宇宙空間へ飛び出した。
この時点で両者の距離は40mほど、推進装置を持たない歩ヒョウを避けるには十分な距離であった。
『歩ヒョウ』=『鈴音』を避けて左右に分れるビルドアーム。
と、不意に右足を引かれたのは左側のビルドアームであった。

「かかった!」

蘭丸の特器術『射綱』が左側のビルドアームを捕らえたのである。
巻きついた分銅付きワイヤーを引くと一気に距離を詰めにかかる蘭丸。
しかし、ビルドアームの対応も早かった。
取り出した刃でワイヤーの切断を図る。

「遅いっ!」

ワイヤーが切断された時には両者の距離は5mを切っていた。
次の瞬間、振り下ろされた刃を握ったビルドアームの右腕を取った蘭丸の『歩ヒョウ』=『鈴音』は、そのままビルドアームを駆け上る。

(ん?)

背後に気配を感じた蘭丸は動物的な感で捕まえていたビルドアームを盾にした。

がつっ

と伝わる軽い振動は残る一体のビルドアームの振るった刃が捕まえたビルドアームの左腕をかすめた振動であった。
しかし。。。

(こいつら、やけに馴れてやがる)

捕まえたビルドアームの背中を取った蘭丸の『歩ヒョウ』=『鈴音』を見て残りの一体はあっさりとグリソムの方へ方向転換をした。
蘭丸が捕らえたビルドアームは船から離れるように移動を開始する。

「ちっ」

蘭丸は舌打ちを一つした後、捕らえたビルドアームを蹴り飛ばし解放した。
赤いゴリラをぶら下げた小桜の宇宙船を見つけたからである。



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