星乱拳客伝 外伝 三つ目 廻国編
四の巻
第6章
「うっちゅう〜かいぞくぅ〜」
「ご〜り〜ぽぉ〜ん」
どこかで聞いたことのあるフレーズに完全に間違えている歌詞をのせ、常夏の国のビーチで能天気に歌うかのような女は、三雲茜であった。
小桜の宇宙船で近場のビルドアームに方向転換を果たす。
眼前に急接近するビルドアームが上へ逃げるのを茜の『歩ヒョウ』=『猩々』の長い腕が捉えた。
掴んだ左足首を強引に引き寄せるとクルリと反転し、両足で強烈な蹴りを放つ。
茜の得意技である。
が。。。
「うそっ!」
ビルドアームは器用に上半身を捻りこれを避けた。
更についでという訳でもないのだろうが、腰の刃を引き抜いていた。
「まじぃ?」
マズイ!のかマジ?なのか判断はつかない。
正直どっちでも正解である。
野生の感というやつであろうか、茜は掴んだままの左足首をもう一度引き寄せ蹴った。
両手を離し小桜の宇宙船のほうへ向かう。
ビルドアームのほうは再び態勢を立て直し、追撃へ移るところである。
「ヤバいねぇ」
分が悪いと感じたのであろう茜であったが、やはり緊張感は感じられなかった。
「ま いっか」
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