星乱拳客伝 外伝 三つ目 廻国編

星乱拳客伝 外伝 三つ目 廻国編

四の巻


第4章


ごきり

と蘭丸は『歩ヒョウ』=『鈴音』の中で首を鳴らした。
右隣には双葉の『歩ヒョウ』=『ディアブロ』、
更にその向こうには茜の『歩ヒョウ』=『猩々』。
思えば誰かと共に闘うことのなかった蘭丸は奇妙な気持ちであった。

(今更だけど、事前に打ち合わせとくべきだったかな)

時既に遅し、こちらに向かう光点から小さな光点が3つ吐き出された。

(こっちの数に合わせたって訳じゃないんだろうが。。。)

急速に接近する小さな3つの光はビルドアームの姿をしていた。
その時、

ちっちかっ

右の方で赤い光が明滅したかと思うと茜の『猩々』が宇宙空間へ飛び出していた。
光の意味は「いきます!」

「オイ!」

思わず叫んだ蘭丸であったが、推進装置を持たない歩ヒョウは慣性の法則に従う他ない。
敵に避けられればそれまでと、踏みとどまった。
と、後方から赤いモフモフを追うように小型船が追いかけて行く。
小桜であった。
このへんの連携は流石といったところだろう。
隣を見ると、双葉の『ディアブロ』が背中の箱を下ろし終わったところだった。
良く見ると、表面に様々なレリーフが施されている。
と、そのうちの一つをポンと叩いた『ディアブロ』。
ニョキッと出てきたのは棒状のものであった。
『ディアブロ』はその棒を掴み一気に引き抜く。
それは10メートルはあろうかという巨大な刺又(サスマタ)であった。
(ディアブロは8メートルほどの大型歩ヒョウであったが、それよりも更に長い)
『ディアブロ』が背負っていた箱は蘭丸が朽葉邸を訪れた際に持たされた、あの『箱』であった。
様々な武器・道具が練り込まれた、朽葉の道具箱(衣装箱と呼ばれることもあった)である。

「好き勝手やりやがって」

言葉とは裏腹に、獰猛な笑みを浮かべた蘭丸は腰の隠しポケットから分銅の付いたワイヤーを取り出し、甲板の突起物(甲板上で物体を固定しておくためのもの)に投げ付けた。



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