星乱拳客伝 外伝 三つ目 廻国編
二の巻
第10章
「納得できません」
きっぱりと言い放つ双葉の視線の先には蘭丸がいた。
「どうしましょう?」
責められている筈の蘭丸は気にした風もない。
「卑怯な。。。正々堂々と立ち会いなさい!」
この場で殴りかかりかねない双葉の言葉。
「バカモン!」
今まで、成り行きを見守っていた朽葉氏が双葉を怒鳴りつける。
「試合中に油断したのはオマエの方だ!よくもヌケヌケと。。。そのような言葉を吐きおって!」
双葉の気性は師匠ゆずりじゃねの?っと、この状況を微笑ましいとさえいえる気持ちで見ていた蘭丸。
「まぁまぁ、双葉さんは納得いかないようなので、もう一度立ち会いましょう」
「今度はフェイクなんて使わずに、正々堂々と試合ますから、ね?」
先ほどの試合で、双葉の『歩ヒョウ』=『ディアブロ』の一撃に大きく態勢を崩した蘭丸の『歩ヒョウ』=『鈴音』は意味のない光信を発信することで双葉の気を逸らし持ち堪えたのである。
もちろん普通、このようなことはしないから、双葉にとっては『卑怯者』以外の何者でもなかったのである。
一方、『あの人』を祖父に持つ蘭丸にとっては、ナンデモない出来事である。
「いや、試合はこれで決着しています。いいな!」
朽葉氏の最後のいいな!は無論、双葉に向けた言葉である。
火を吹きそうな視線を蘭丸に注いでから、失礼しますと部屋を出て行く双葉。
それでも襖(ふすま)をバタンと閉めるような事はしない彼女のマジメさを好ましく思う蘭丸であった。
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