星乱拳客伝 外伝 三つ目 廻国編
二の巻
第8章
それはゆっくりと大きな動きであった。
磁力で引かれあい、また同じ磁力で反発しかっているかのような柔らかな力。
その力を序々に絡めとってゆくように蘭丸の『歩ヒョウ』=『鈴音』と双葉の『歩ヒョウ』=『ディアブロ』の左腕は動いていた。
いや、動いているのは左腕だけではない、全身を使って左腕を動かしている。
押す、引く、押す、引く。
知らぬ者が見れば二人で目に見えない『何か』を捏(こ)ねているように見えたかもしれない。
粘度が高く、高温の何か。。。飴のようなものであったろうか、それは無論目には見えない。
「ほぅ」
目を細めながら、この試合を見届けているのは朽葉氏であった。
「なかなかのモノだ」
老人の目には二人の巨人の左腕に絡みついた巨大な『力』が見えているようであった。
巨大な力を捏ね上げて行く二人の巨人。
ずんっ
ずしんっ
いつからであろうか、互いが力を押しつける際、吸収しきれないのであろう力が地面を揺らすようになっていた。
ずしんっ
ずんっ
ずずんっ
朽葉氏の左側、小さい方の『歩ヒョウ』=『鈴音』から大きい方の『歩ヒョウ』=『ディアブロ』へ力が大きく移動したその刹那、今まで以上の衝撃が走った。
倒れる!
そう思った時、脅威的な体捌きで力を一度後方へ受け流し、更に加速させて。。。
ずんんんっ
『鈴音』に叩きつけた。
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