星乱拳客伝 外伝 三つ目 廻国編

星乱拳客伝 外伝 三つ目 廻国編

二の巻


第6章


「推手(すいしゅ)はご存知ですか?」

双葉の言葉に、これですか?
と静かに右腕を前に出し緩く手を開いてみせた蘭丸。

「ご存知なら話しは早いです」
「歩ヒョウを使って大立ち回りという訳にもゆきませんので、推手でお願い致します」

双葉のいう推手(スイシュ)とは太極拳などの中国武術での練習法の一つである。
簡単に言うと、手の甲と甲を合わせた状態で押し合い倒れた方が負けというシンプルなルール。

「鈴音は右腕が壊れておりますので、別の歩ヒョウをこちらでご用意いたしましょう」

双葉の申し出に、鈴音で試合わせてください、と動き出そうとする双葉を止めた。

「わかりました。。。では早速」

と踵を返すと部屋を出ていった双葉。

「ああ見えて、アレは短気なタチでして。。。困ったもんです」

朽葉氏の苦笑いは、この事態を楽しんでいるようであった。



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